- はじめに
- 記念式典で感じたこと
- 第42回全国伝統工芸士大会から
- 令和6年度産地伝統工芸士会の活動状況報告に対する計量テキスト分析 -KH Coderによる共起ネットワークの作図
- KOUGEI EXPOから -11月8日の秋晴れの午前の記憶
- TEWAZA LIVE
- 終わりに
はじめに
11月7日(木)、小松駅に隣接する團十郎芸術劇場うららで開催された大会の記念式典と、翌8日(金)、石川県政記念しいのき迎賓館での合同開会式、その後のKOUGEI EXPOを訪れました。この2日間の様子を、あくまでも一個人の感想としてここに記録させていただきます。
両日とも快晴に恵まれ、素晴らしい時間を過ごすことができました。特に、8日朝のしいのき迎賓館上空に広がる青空の下で行われた開会式は、私にとって印象的なものでした。普段は「ハレ」の場となる式典や行事を得意とはしていない私ですが、その日ばかりは清々しい空気に包まれ、心地よさを感じた時間となりました。
また、今回初めて目にした「テープカット」の光景も新鮮でした。会場の一つであるしいのき迎賓館の正面玄関から入場する際、儀礼としてのテープカットの意味をリアルに体感できたような気がします。この形式的ながらも象徴的な瞬間には、文化的行事としての意義や華やかさを感じ取ることができました。
その後、しいのき迎賓館、金沢21世紀美術館、香林坊アトリオといった各会場を巡りました。参加者、関係者、そして私のような傍観者や観光客が集う中、耳にした伝統工芸士同士の会話やそのやり取りには、単なる展示会を超えた生きた交流が垣間見えました。
その場で感じ取ったのは、今に息づく伝統工芸の力強さと、それを支える生身の人々の情熱や思いです。それぞれの作品には、作り手たちの努力や誇りが宿っており、その「今」を目の当たりにすることで、伝統工芸の未来への可能性も垣間見えた気がしました。
このような場に足を運ぶことで、普段なかなか接することのできない「伝統工芸」という文化の深さを改めて体感できたことに感謝しています。日本の文化遺産が、現代の風とともに息づいていることを感じる貴重な時間でした。

團十郎芸術劇場うらら前

しいのき迎賓館前
記念式典で感じたこと
今回、初めてこの大会に参加させていただいた最大の理由は、現在の伝統工芸士の方々が置かれている状況を少しでも体感し、これからの伝統工芸やその工芸品、さらには各地域に残る民芸や歴史的人工物のあり方について考えるきっかけを得ることでした。
これまでも数年間にわたり伝統的工芸品に関わる機会をいただき、その中でこのような大会の存在についてもお知らせを受けておりました。しかし、在職中は秋の素晴らしいこの時期に自由に身動きを取ることが難しく、西千葉での業務に専念している状況でした。今回、ようやく足を運ぶことができたことに感謝しつつ、より一層の関心を持って臨みました。
7日午後、うらら大ホールでの記念式典では、登壇された方々のお話をしっかりと耳にしようと意気込んで臨みました。ただ、ホールの適度な暗さと心地よいシートに腰を下ろした瞬間、思いがけない安堵感に包まれ、一時的に集中力を欠いてしまったのは否めません。式典の中で語られた一言一句、そしてその背後にある意図や背景を深く受け止めるつもりでしたが、全てを把握できなかったことは、今でも少し心残りです。
それでも、式典の空間全体から伝わる空気感や熱意に触れることができたことは、大きな収穫でした。このような場に参加し、耳を傾けることを通じて、伝統工芸の現状やその未来について考える貴重な機会をいただけたことに、深い感謝を覚えています。
記憶に残る大切な言葉
記念式典の中で、すべてのお話を完全に聞き取ることは叶いませんでしたが、それでも心に刻まれる言葉がいくつもありました。以下に挙げるのは、各発言を聞きながら私なりに解釈し、自分の言葉に置き換えたものです。これらは、走り書きのメモではありますが、今後を考える上で貴重な指針となると感じています。
- その土地その土地のものを、その土地のものとして次に伝える
地域の個性や文化を尊重し、それを次世代に受け継ぐことの重要性。 - とにかく売れることが大事
持続可能性を保つためには、商業的成功が不可欠であるという現実。 - 工芸品を日本の文化の「形」として海外に発信すべき
工芸品を通じて、日本文化の魅力を広く伝える使命。 - 外国人は日本の文化を求めている
海外で高まる日本文化への関心に応えるための工夫。 - 職人自ら海外へ発信すべき
作り手自身が直接その思いや技術を伝えることで、信頼性と価値を高める必要性。 - 工芸、民芸の海外への発信
伝統工芸や民芸を、国際的な視野で展開することの可能性。 - 伝統的なものと新しいものとのコラボ
新しい価値を創造することで、より広い世代に魅力を伝える方法。 - 「食」も含む生活の中での様々なモノゴトとのコラボ
生活全般と結びつけることで、実用性と魅力を高める発想。 - 継承者の育成、技を未来につなぐ
後継者の不足に対処し、伝統の技術を未来に繋ぐための取り組み。 - 伝統工芸は、サステナビリティ、持続可能なものづくりそのものである
長く使えること、環境に優しいものづくりという観点から見た伝統工芸の価値。
これらの言葉は、それぞれが伝統工芸の未来を支える重要な視点を提示しており、私自身にとっても深く考えさせられるものでした。それぞれの言葉が指し示す方向性について、これからも自分なりに考えを深めていきたいと思います。
メモ書きに対するChatGPTからの回答
今回のメモ書きを元に、試しにChatGPTに問いかけをしてみました。あくまで参考の一つとしての試みでしたが、自分の書きなぐりのような文章に対して、冷静な視点からの「修正」や「書き直し」が期待できる点で、興味深い結果を得ることができました。
もちろん、AIの回答をそのまま受け入れる必要はありません。しかし、ChatGPTのようなツールが示す視点には、これまで気づかなかった整理や表現の仕方が含まれており、新たなインスピレーションを得る場面が多々ありました。
今回は、AIが示した方向性を大きく損なわない範囲で内容を調整し、最終的には自分の言葉で再構築しました。このプロセスを通じて、自分の思考がより明確になり、言葉として具体化されていく感覚を味わいました。
このような試みが、文章を書く際の補助的な手段として、また、自分自身の思考を深めるきっかけとして、非常に有益であると感じました。AIの力を借りつつも、自分自身の考えや感性を大切にしながら、文章をより良いものへと磨いていく可能性を改めて実感しました。
その土地その土地のものを、その土地のものとして次に伝える
- 地域ごとの個性や文化を尊重し、発信することが重要です。
- 提案:各地域の歴史や風土と深く結びついたストーリーを工芸品に添え、国内外に紹介する。「地域ごとの特徴を活かした商品展開」を行うことで、観光とも連動した経済効果を生む可能性があります。
とにかく売れることが大事
- 継続性の確保には、商業的成功が不可欠です。
- 提案:現代のニーズやトレンドに合わせた商品開発を進めつつ、伝統の技術や価値観を融合させる。さらに、オンラインマーケティングやSNSを活用してターゲット層に効果的なアプローチを目指します。
工芸品を日本の文化の「形」として海外に発信すべき
- 工芸品は、日本文化を象徴する有力な媒体です。
- 提案:展覧会やポップアップストアを海外で開催し、実物に触れる機会を増やします。また、各国の文化や生活スタイルに合わせた商品を展開します。
外国人は日本の文化を求めている
- 海外では、日本文化に対する関心が高まっています。
- 提案:文化的背景を英語などの多言語で伝えるデジタルコンテンツを制作し、海外ユーザー向けのオンラインプラットフォームを構築します。
職人自ら海外へ発信すべき
- 職人の思いや技術が直接伝わることで、信頼性と価値が高まります。
- 提案:海外での実演イベントやワークショップを開催し、体験型の取り組みを強化します。SNSを通じて職人が日々の制作過程を発信するのも効果的です。
工芸、民芸の海外への発信
- 工芸の魅力を広げるための積極的な海外展開が必要です。
- 提案:政府や地域自治体と連携し、輸出促進や国際展示会への参加支援を行います。さらに、現地パートナーと協力し、販売チャネルを確保します。
伝統的なものと新しいものとのコラボ
- 新しい価値を創造することで、若い世代の関心も引きつけられます。
- 提案:デザイナーやアーティストとのコラボレーションを促進し、現代的でユニークな製品を生み出します。「伝統×テクノロジー」の取り組みも注目されるでしょう。
「食」も含む生活の中での様々なモノゴトとのコラボ
- 生活全般と結びつけることで、実用性や需要を高めます。
- 提案:食器や調理器具など、食文化と関連する商品開発を強化します。また、地元の食材や料理と連携したプロモーションイベントを開催します。
継承者の育成、技を未来につなぐ
- 後継者不足は大きな課題です。
- 提案:若い世代が興味を持ちやすい環境を整えるために、教育プログラムやインターンシップ制度を充実させます。職人の技術をデジタルアーカイブ化することで、知識の共有も進められます。
伝統工芸はサステナビリティ、持続可能なものづくりそのもの
- 伝統工芸には,もともと環境意識の高まりに対応する要素があります。
- 提案:エコロジーやサステナブル素材を使った商品開発を進めます。また、伝統工芸品が持つ「長く使える」という価値を強調し、持続可能な消費文化を促進します。
との回答でした。「自明の理」的な回答もありまし,表面的だなとも思えるような回答もありますが,AIを介して得た,メモ書きに示されて文字に関連する「集合知」の一端として受け留めると,あらためて再確認できることもあるように思えます。
伝統工芸に対する個人的な思い
書き直されたメモ書きを読み直しながら,以下のことを考えてみました。
伝統工芸は、地域の文化や歴史、風土が長い年月をかけて育んだ貴重な遺産です。その土地で生まれたものを、その土地のものとして次世代に伝えることは、その文化を守り、未来に生かすための大切な営みだと感じています。しかしながら、現状では「産業」としての伝統工芸は縮小傾向にあり、存続の危機を迎えているケースも少なくありません。この現実を前に、私自身も葛藤と無力感を抱くことがあります。
伝統工芸が「産業」の枠組みに収まらない理由は、大量生産・大量消費の時代が築き上げた価値観との相違にあるように思います。工芸品は一つひとつが手仕事による唯一無二の存在であり、その「モノが持つ存在感」は大量生産品には決して再現できません。しかし、現実には「手頃な価格」が求められ、観光土産などでは本来の価値が薄められた製品が目に付くことも多々あります。これでは、工芸品の背後にある職人の技術や文化への敬意が失われかねません。このような状況を見ると、もったいなさと悲しさを感じずにはいられません。
伝統工芸を未来につなげるためには、さまざまな角度からの真剣な試行錯誤が求められます。一つは、地域の物語や文化的背景を発信することです。工芸品が単なる商品ではなく、その土地の精神を映し出す「文化の形」であることを強調することで、国内外の人々にその価値を訴えることができるでしょう。また、現代のニーズやトレンドに適応した商品開発も欠かせませんが、伝統の技術を犠牲にするのではなく、むしろそれを活用して新しい価値を生み出すべきです。
さらに、職人自身が発信者として動くことも重要です。SNSやデジタルプラットフォームを通じて制作過程や思いを伝えることは、工芸品の魅力を広める有効な手段です。海外での展示やワークショップは、伝統工芸を異文化に理解してもらう機会となるでしょう。また、後継者の育成も喫緊の課題です。若い世代が関心を持ちやすいように教育の場を整備し、技能や知識をデジタルアーカイブ化することで、未来に確実につなげていく必要があります。
伝統工芸はその本質において、持続可能なものづくりそのものです。長く使い続けられる価値、自然素材を生かした製品づくりは、現代のサステナブルなライフスタイルと共鳴するものがあります。この強みを生かしながら、伝統工芸の輝きを取り戻し、広く発信していきたいという思いを抱いています。
「素晴らしい」と心から感じるその魅力を、どうしたらより多くの人に届けられるのか。これは個人的な課題でありつつも、私たち一人ひとりが考えるべき文化の未来の問いではないでしょうか。
第42回全国伝統工芸士大会から
伝統工芸士でもなく、ものづくりの技術や素養を持たない自分が参加しても良いのだろうかと迷いました。しかし、伝統工芸の最前線に触れる貴重な機会であると考え、厚かましいとは思いつつも、思い切って参加させていただきました。恐縮しながらも会場ではひっそりと振る舞うつもりでしたが、結果的には前席に陣取り、身を縮めながらも貴重な時間を過ごさせていただきました。
フロアーの情熱
今回の場は「パネルディスカッション」の形式ではありませんでしたが、初めて「フロア」が活発にその場に関与している様子を目の当たりにしました。特に印象的だったのは、各産地の伝統工芸士会の皆さんによる自己紹介の場です。広々とした大ホールには2階席や桟敷席もあり、その空間に集結した伝統工芸士の皆さんが、産地名が呼ばれるたびに立ち上がり、元気いっぱいに、時には控えめに挨拶をされる光景は非常に印象深いものでした。
これまで各産地については写真や文字を通じて知識を得るにとどまっていた私にとって、その場で生き生きとした姿を見ることは、産地とそこに息づく人々をリアルに感じる貴重な機会となりました。それぞれの産地で、その伝統を受け継ぎ、工芸品を生み出している方々が目の前にいる――その事実が鮮やかな現実として迫ってきたのです。
かつて、伝統工芸士の認定事業に少しだけ関わった経験がある私にとって、担当した産地の名前が響いてきたときは、その地にいる人々の息遣いがどこか懐かしく感じられ、不思議な感慨に包まれました。また、その日の夜に行われた懇親会の様子が自然と想像され、普段は懇親会が得意ではない私でも、珍しく参加してみたいという気持ちが湧いてきたほどです。
翌日8日の展示会場では、伝統工芸士の皆さんが交わすちょっとしたやり取りから、前夜の懇親会の余韻が垣間見える場面もあり、そこからも伝統工芸士同士の交流の深まりや温かさを感じ取ることができました。人と人、地域と地域を結びつけるこうした場が、伝統工芸の未来を支える一助となるのだと、強く実感した時間でした。
作り手としての発話 ー「昨日より良いものを作る」
「昨日より良いものを作る」という言葉は、ものづくりの場を超えて深く心に響くものでした。この一言に込められた真摯な姿勢と生き方への向き合い方は、ただものを作るためだけの教訓ではなく、生きること全般に通じる普遍的な指針のように思えました。
特に、「それを一生続ける」という暗黙の誓いが含まれていることを感じ取ったとき、その言葉の尊さが一層胸に迫りました。一日一日を丁寧に積み重ね、常に昨日の自分を超えようとする姿勢には、何ものにも代えがたい価値があります。それは職人だけではなく、私たち一人ひとりが自分の人生において実践すべき大切な心構えではないでしょうか。
この思念が作り手の心の中で守られ、継続されることで、伝統は進化を遂げ、新たな価値を生み出していくのだと思います。そしてその姿勢は、次世代へと受け継がれる「文化」そのものでもあるように感じます。この言葉を胸に、私自身も日々の在り方を見直し、襟を正して歩んでいきたいと改めて思いました。この「文化」が平和に伝えられる生活が,これからも守られることの大事さを再認識させられました。
令和6年度産地伝統工芸士会の活動状況報告に対する計量テキスト分析
–KH Coderによる共起ネットワークの作図

いただいた大会資料の中に,「2024(令和6)年度 産地伝統工芸士会の活動状況」の報告文書がありましたので,スキャンし,OCRでテキスト化してみました。その後は,組合,カテゴリ(産品名称:織物,陶磁器など)ごとにその記述内容を整理し,エクセル表にまとめてみました。この表に対してKH Coderを適用し,組合ごとの記述内容から読み取れる,産地の状況,特殊性,共通性の一端が見えてくるのでは期待しています。
ここでは,産地の特徴を見るのではなく,この報告書に示されている記述内容に共通してあるものを読み取りたいと考えています。組合ごとに言葉の使い方,言葉間の関係性の持たせ方に相違があるため,オリジナルデータを整理し,主要用語は共通言語に言い換えた上でのテキスト分析が,分析結果の表面的な美しさを得るには適切なのかもしれませんが,ここでは,各産地からの“生の声”の一端でも感じ取りたいので,できるだけそのままのテキストに対する分析を行いました。
例えば,「製作」と「制作」の使い分けですが,一本化する方法も考えられるのですが,記述内容からは,「製作」⇄「産業」,「制作」⇄「作品」との異なるつながりが見えてきますので,産地間での言葉づかいの表面的な差異だけにとどまらず,工芸品に対する根本的な視点の置き所の違いの可能性が存在することを否定することもできませんので,この2つの「セイサク」を一本化することは避け,原文のままでテキスト分析しています。
報告書に出現する「語」のグループ分け

頻出頻度上位60語までを分析対象として上図のネットワークが得られています。このネットワークは「共起ネットワーク」と呼ばれ,文章中において,今回は組合ごとの記述を基準として,前後して同時に出てくる「語」のつながりを可視化したものです。太い線ほどそのつながり(繰り返して,文脈で前後して同時に出現する頻度の高さ)が強い,つまり,Aという語が出る時は必ずBという語が出てくるときは,AとBとは太い線でつなげられることになります。AとBとは共起関係にあるされるのです。上図では,この共起関係を示すと同時に,相対的に同質の関係性を有する「語」のグループを色分けし,「語」群の関係性を図式化しています。この図からも,「製作」と「制作」は異なるグループにあり,これらの言葉が,単に「工芸品を作る」ことを意味しているだけではなく,それ以上に,産地においての工芸品の位置づけもしくは,価値観,思いなどが異なっていることの可能性を暗示しているようにも見えます。
このグループ分けはKH Coderのサブグラフ検出(random walks)によります。特に気になる「語」を書き出しますと,「「イベント」,「協力」 ; 「展示」,「出品」,「販売」 ; 「技術」,「活動」,「指導」 ; 「体験」,「実演」,「教育」 ; 「授業」,「出展」などです。「;」はグループごとの区切りです。この図だけでも,全体の方向性は,これまでの動向と同じであり,あえて重ねて言及する必要もないように思えますが,グループごとの取り組みの方向性や,見え隠れする価値観の相違については,注意深い情報収取と分析と考察が必須かなと感じています。つくづく,この程度の言葉の遊びでは,本質的な解を得ることは難しいことを再認識しています。もっと真剣に取り組まねばと感じています。
報告書内の「語」の中心にあるもの
さらに,KH Coderの中心性(媒介)で再度色分けをしますと,下図のように,「体験」,「技術」,「職人」の語を中心とした語間のつながりが直感的に理解できそうになってきます。「職人」による「伝統技術」の「体験」の大切さが明確に見えてきます。

このテキスト分析では,現在の各産地の伝統工芸士会の活動状況の一部を,図式化しただけです。もっとも重要なことは,ここに現れている語を中心に,その元である活動状況報告書をしっかり読み込むこと,そして,それ以上に,各産地の実際の状況を自らの五感でしっかり把握しなければ,本当のことは何も言えないと,改めて確認することになってしまいました。ここでは,あくまでもご参考までということでお許しいただければ幸いです。
最後に,上記の「語」の共起の関係性を分かりやすく表示するために,以下の表に示す語は,それぞれにテキスト分析において制御してあります。特に,大事な「語」であっても,出現頻度が高く,「自明の理」的な「語」については,意図的に外し,より特徴的な「語」群の関係性が浮き出るように調整してみました。

KOUGEI EXPOから
-11月8日の秋晴れの午前の記憶
当初、ブログに記録を残すことを前提にしていれば、もっと意識的に写真を撮る方法を選んだことでしょう。しかし、今回は「その場に没入し、そこにいる人々の息づかいを感じること」を最優先にしたため、残念ながら気の利いた画像は一枚も撮れませんでした。振り返ってみると、それが少しもったいないことだったと思う一方で、むしろこの状態で自問自答を繰り返しながら記録を残すことに、より大きな意義があるのではないかとも感じています。
まずは、いただいた「KOUGEI EXPO IN ISHIKAWA MAP」のスキャンデータを以下に添付いたします。この資料が手元に残っていたことが、非常にありがたいことだと感じています。
表面

裏面

しいのき迎賓館の1階と2階に広がる展示・販売エリアは、まるで絵巻物のように横に広がり、曼荼羅のような空間が広がっていました。この空間は非常に魅力的で、工芸品を前にして直接お話しできる貴重な機会でしたが、雰囲気に圧倒され、気おくれを感じてしまい、結局そのチャンスを活かすことができませんでした。しかし、思いのほど多くに言葉を交わすことはできませんでしたが、話すこと以外の全ての感覚を開き、その場の雰囲気や工芸品を通じた参加者間のやり取りの様子は、今でも身体全体で記憶に残っています。
また、21世紀美術館B1で行われた制作展示とワークショップは、想像を遥かに超えるものでした。8日には帰宅しなければならなかったのですが、この会場に足を踏み入れた瞬間、延泊すべきだったのではないかという気持ちで一杯になりました。
もともと記録を残すことを目的とした取材旅行ではなかったため、KOUGEI EXPOの様子を示す写真は少ないのですが、その中でも数枚の写真があります。これらの画像を手掛かりに、少しだけその魅力をお伝えできればと思います。
岐阜和傘

その演出は、息をのむような美しさでした。糸を骨に絡めていく様子は、とても自然でありながら、どこか神秘的な美しさを感じさせました。和傘本体そのものの作り込みだけでなく、その製作者の存在の示し方にも強く心を引かれました。モノとヒト、ここでは製作者とのリアルタイムな関係が、非常に印象的に描かれており、その演出に心を動かされました。形と色、そしてその場で繰り返し行われる流れるような動きが、この工芸品の名と共に、鮮明に記憶に残るものとなりました。
井波彫刻

以前より社寺彫刻(宮彫)の形態調査を行っていたことから、井波彫刻が伝統的工芸品の一つであることを改めて認識しました。これまでは「工芸品」というより「歴史的文化財」としてのイメージが強く、井波彫刻が現代のクライアントの生活空間を彩る工芸品としての価値を考えるきっかけとなりました。この気づきは、伝統的な技術が現代の暮らしにどのように息づいているのかを再考させる貴重な経験となりました。

一般的な三面図ではなく、単一の視点からの下絵のみを基にして、限られた材料の中で生き生きとした存在感が生み出されていく工程は非常に興味深いものです。面から立体が形成されるプロセスは、多くの示唆を含んでいるように感じられます。たまたまステレオカメラを持参していたため、1ショットで簡易的な3Dデータを取得してみました。厚さ約80mmの材から掘り出される準3Dの世界において、約20mm前後の切削面の向きが変化することで立体感が表現されていく過程は、とても魅力的でした。

横が900㎜,縦が600㎜程度の大きさです。存在感があります。
孔雀に牡丹/新潟・白根仏壇

この一枚彫の材料は五葉松です。実は別の案件で、パリのCernuschi美術館に展示されている、江戸時代末期にフランスに渡ったとされる龍の彫刻の作者同定を行っているのですが、その彫刻の材料も五葉松とされています。一般的に社寺に設置される龍やさまざまな彫刻(宮彫)には、欅のような硬く切削面が荒れにくい材料がよく使われると聞いており、五葉松は比較的レアな素材とされていました。そのため、作者同定のために五葉松の使用例を探していたところです。五葉松は欅に比べて軟らかく、刃の進みを抑えるのが難しく、切削面も荒れやすいとされていますが、それでも非常に存在感のある作品に仕上がっていました。五葉松の使用例は他にもあり、個人的には大きな収穫となりました。今後、五葉松の使用状況について更に調査し、関係者にお伺いしに行きたいと考えています。
獅子頭/井波彫刻

木目が網膜に強く残る存在感があります。木目と獅子のイメージ、そして鼻先の刃痕が生み出すテクスチャーが、その彫刻の個性を際立たせています。この彫刻は桐材で作られており、材料の特性や特徴と、それから生み出される形の雰囲気との関係性にとても興味を惹かれます。桐材特有の軽やかさと柔らかさが、形にどのような影響を与え、どういった雰囲気を生み出しているのか、それを探ることがとても気になるところです。
TEWAZA LIVE
目移りするような多彩なワークショップ群は圧巻でした。もし時間と資金に余裕があれば、すべての体験を試してみたいと思うほどです。しかし、残念ながらKOUGEI EXPO初日の午前中しかこの空間に滞在できず、とても貴重なチャンスを逃してしまったように感じています。
各体験にかかる時間を見ていると、体験の本格的な内容がひしひしと伝わってきます。正直、体験料が少し高いと感じた瞬間もありましたが、それが本物の貴重な学びを得るための代償であることを、今になって実感しています。この機会を逃したことを後悔しています。一つでも体験しておくべきでした。
KH Coderで分析した各産地の伝統工芸士の活動状況からも、「体験」-「技術」-「職人」という構図が浮かび上がっていました。伝統技術や物質文化を次世代に伝えるためには、現代における「体験」の重要性を、自分自身でしっかり学ぶべきだと強く感じました。
終わりに
とても印象に残る2日間でした。最高の青空の下、しいのき迎賓館の風景、そして、そのしいのきの前に立たれていた冨永愛さんの姿が、今も鮮明に記憶に焼きついています。同大会のステージイベントに参加されていたようです。TEWAZA LIVEの写真も一緒に記録として残しておけばよかったのですが、その圧倒的な存在感には、写真を撮る余裕すらありませんでした。どちらも言葉にできないほど印象的でした。

しいのき迎賓館の正面に向かって左手のしいのき
最後に、今更ながら気づいたことがあります。それは、石川県立歴史博物館に訪れていないことです。この場所は、絶対にもう一度金沢に行くべき理由の一つだと感じています。加えて、今回は近江町市場にも足を運ばなかったため、まだ多くの「宿題」が残っていることにも気が付きました。
8日の夜、新幹線の車窓から外を眺めながら、残り2日間のKOUGEI EXPOがとても気になっていました。その時、前の座席には大きな紙袋が掛かっており、その袋には「工芸の底力」や「美技」という言葉が印刷されていました。それを見て、強いメッセージを感じました。このような大規模な大会を計画し、準備し、運営することの大変さに思いを馳せながら、参加者として自分がただ楽しむだけの立場であったことに対して、少し申し訳ない気持ちを抱きました。それでも、この2日間は心から感謝し、有り難い時間であったと感じています。自分自身も、これからは自分なりに頑張ってみようという気持ちが新たに湧きました。

帰りの新幹線にて


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