分かっていたつもりの角運動量①ーハンマー型剛体での再考

新年度が始まり、複数の講義で「モーメント」(剛体の回転にせよ、弾性体の曲げにせよ)と「角運動量」がキーワードとなる科目をリスタートさせています。今年こそはその本質を!と勢いよく始めてしまっているのですが、なんだか空回りしているようです。

そうした中で、「モーメント」に対する誤解はどうにか回避できているように感じているのですが、それと表裏一体であるはずの「角運動量」、そして「慣性モーメント」への理解が、驚くほど定着していないことに気づき,どうしたものかなーと案じているところです。教材やアプローチを変えながら試行錯誤しているですが、そろそろ次のステップに行かないと,授業時間そのものが尽きてしまいそうです。こうしたブログを書いている場合ではないのですが…

どうしても、「角運動量」がつかめない。受講生がというより、まず自分自身が、です。生理的に受け付けにくいというのも、ある意味で理解できます。「運動量」以上に不思議な存在でありますし、「モーメント」は「てこの原理」を通じて直感的な理解が得られやすいですが、そこに回転という要素が加わると、話は一気に難しくなります。それに「力」と同様、目に見えるものでもありませんし,抽象的な概念として受け入れるには、大きな壁がありそうです。

そして,授業準備の最中に自分自身がその「角運動量」を分かっていなかったことに、改めて気づかされてしまいました。分かったつもりになって,自慢げに、回転するコマがなぜ倒れないかを語ったり、よく回るコマを作って見せたりもしてきましたが,冷静に考えてみますと、「自分は何も分かっていなかった」ということに気づいてしまいました。

角運動量――その実体は一体、何なのか。
いま、あらためて本気で向き合わねばならない。


Working Model 2Dでの力学実験

1999年に初版が出た、コロナ社刊『エンジョイ!力学実験』(阿部宏之氏・鈴木賢治氏 共著)を手にして以来、Design Simulation Technologies社の「Working Model 2D」とも長い付き合いになっています。紙と鉛筆だけではどうにもならないときに、現象の直感的理解を助けてくれる頼れる存在です。

ここではまず、もっとも単純な剛体を対象に、その「角運動量」の実体について確認してみたいと思っている。先ほども「角運動量」と入力しようとして、うっかり「架空運動量(kakuuundouryou)」と誤変換してしまい、『まさにそれだなあ……』と苦笑してしまいます。どうにも、やっかいな相手です。その他に,「家訓同僚」も頻繁に現れます。なんとも示唆的です。

今回扱う剛体は、質量\(0.1kg\)の物体(図上では半径\(0.2m\)の円板で表現)と、それを先端につける長さ\(2m\)の質量が無視できるとする剛な棒から構成されています。棒の質量と慣性モーメントは,シミュレーションにおいてぎりぎりエラーが出ないできるだけ小さな値として,それぞれに,\(m_棒=1.0 \times 10^{-5} kg\),\(I_棒=1.0 \times 10^{-10} kg \cdot m^2\)としました。ハンマー型と呼称しつつも,この物体は本来、質点として扱いたいのですが、図解のわかりやすさも含めて,Working Model 2D上では何らかの大きさをもたせなければならないので、この物体(ハンマーヘッド)の慣性モーメントは\(I_{ヘッド}=1.0 \times 10^{-6} kg \cdot m^2\)としました。

このハンマー型の剛体は、滑らかな水平面上に置かれており、重力の影響は無視します。棒の先端(物体の付いていない側)は面に固定され、回転のみが自由にできる構造です。この剛体のハンマーヘッドに対して、同じ質量・同じ大きさの別の物体(以後は「物体A」)を、速さ \(0.5m/s\)で左から完全弾性衝突させる場面を想定しています。アニメーションは ステップ幅\ (0.05s\)で実行し、32フレームごとに軌跡を残す設定です。

理想的な「質点」同士の衝突を考えたいところですが、シミュレーション上では円板として表現せざるを得ませんので、誤差が生じます。この条件下で観察してみると、速さ\(0.5m/s\)でハンマーヘッドに衝突した物体Aは、衝突後にほとんど静止し、その代わりにハンマーヘッド(円板)はおよそ 周速\(0.499993m/s)で円運動に移行していることが確認できます。意外とうまく完全弾性衝突が再現されたようです。

衝突前後の運動量と運動エネルギーの比較

衝突前の運動量は物体Aのみが速さをもっているので,この衝突系全体の運動量(質量 \(\times\)速度)は

\(0.1[kg] \cdot 0.5[m/s] = 0.05[kg \cdot m/s]\)

です。運動量そのものも実は不思議な感じもしますが,一般的に質量\(m\)の物体が速度\(\mathbf v\)のときの運動の勢いを表現するには,この両者を掛け合わせた\(m \cdot \mathbf v\)がやはり適切なものであるように思えます。

さて,衝突前のこの系全体の運動量は \(0.05[kg \cdot m/s]\)です。そして,上のシミュレーションの結果を読み取りますと,衝突後は物体Aは静止し,その速度をほぼそのままハンマーヘッドが受け継いでいることが分かります。衝突後のハンマーヘッドの運動量の大きさは

\(0.1[kg] \times 0.499993[m/s] = 0.0499993[kg \cdot m/s]\)

なので,基本的には2つの質点の衝突問題を強引に質量と剛体の衝突問題に持って行った割には,衝突前後での運動量の保存が担保できています。理想的な状態では,かつ解析的(手計算による)には期待されるとおりの結果ですので,まずは良かったかなと思います。続けて,図の下には物体Aとハンマーヘッドの運動エネルギーも示されていますが,当然ながら衝突前後でそのエネルギー\(K=0.0125[J]\)は変わっていないことが確認できます。完全弾性衝突なので当然なのですが,運動エネルギーの保存も確認できます。

これで,角運動量を確認する前の準備が終わりました。ここまでの確認内容ですと,特に問題なく次の確認に行けそうです。

余談ですが,この運動の勢いを体感するには,自らがストッパーとなって,両足で踏ん張り,かめはめ波の両手のひらで,その物体\(m[kg]\)の直線運動\(\mathbf v[m/s]\)を静止させれば良いかもしれません。その時に,そのふんばる両足の裏の力\(F[N]\)が一定であり,身体ごと\(s[m]\)ずれて静止できたとすると,少なくともその運動の勢いが持つ潜在力である運動エネルギーを,ストッパーは\(F \times s [Nm]\)の仕事として体感することができたとも言えるかもしれません。直接的に運動量を仕事にまでもっていくには力積と積分を介する必要があるのでここでは省略しますが,とにかく,運動量は運動している物体の勢いであることは再確認できるかなと思います。

衝突前後の角運動量と運動エネルギーの比較

ここまでは棒の質量と慣性モーメントは十分に無視できるものとして話を進めてきましたので,剛体としての考察はしてきていません。しかしながら,物体Aは直線運動(並進運動)をしているのに対し,このハンマー型剛体は,棒の上端を回転支点とする回転運動をしています。衝突前後で並進運動から回転運動に系の運動様式が変わっています。

衝突後のハンマーヘッドの運動量の大きさは衝突前の物体Aのそれを引き継いでいますが,その運動の軌道は円上にあるので,その向きは時間と共に変化しています。ある方向への運動の勢いを示す運動量の保存則だけでは,この剛体の回転運動を説明することはできないように思えます。回転運動における運動の勢い並進運動における運動の勢い同様に定義する必要があるわけです。

そこで後述の「角運動量の図解」へとつながるのですが,その前に,まずは,既知の情報を手掛かりにこのシミュレーションの結果の妥当性を確認しておきたいと思います。

衝突後の剛体の角運動量ー回転支点を中心として

回転支点を中心としたときのこのハンマー型剛体の角運動量の大きさ\(L_{ハンマー}[kg \cdot m^{2}/s]\)は,棒の長さは\(r=2[m]\)なので

\(L_{ハンマー}=r \times m_{ヘッド} \cdot v_{ヘッド} = 2.0[m] \times 0.1[kg] \cdot 0.499993[m/s]=0.0999986[kg \cdot m^{2}/s]\)

となります。有効桁数を使わないと怒られそうですが,このままにしておきます。おおむね,\(L_{ハンマー}=0.1[kg \cdot m^{2}/s]\)としても問題ないかなと思っています。この大きさがこのハンマー型剛体が棒先を支点として回転しているときの運動を勢いの大きさを示す数値であると理解してもいいかと思います。

衝突前の剛体の角運動量ー回転支点を中心として

この回転しているときの運動を勢いは,衝突前の物体Aによって剛体に与えられたものです。少なくとも,この衝突前後において運動量も運動エネルギーも保存されていることは確認されていますので,この回転の勢いも衝突前の物体Aが持っていた何かを受け継いでいることは間違いありません。もっとも自然な表現としては,運動量の保存則に対して,これも既知の情報ですが,角運動量の保存則となります。

ここで一つの壁が現れます。回転している剛体の角運動量は,まだ理解できるものの,回転していない物体の並進運動に,その回転に引き継ぐ何かが,つまり衝突前の角運動量を物体Aが持つことは,確かに心情的に理解しづらいだろうなーと常々感じるところです。大人な対応で割り切ってしまえばそれまでのことなのですが,やはり何か釈然としないところがあります。

とにかくここでは,既知の“常識”に従って,物体Aの運動量\(m_{物体A} \cdot v_{物体A}\)つまり\(0.1[kg] \times 0.5[m/s]=0.05[kg \cdot m/s]\)に,やはり不思議な感じもしますが,剛体の棒の回転支点からの距離\(2[m]\)を掛けますと,この回転支点を中心とする物体Aの衝突前の角運動量\(L_{物体A}\)は

\(L_{物体A}=2[m] \times 0.05[kg \cdot m/s]=0.1[kg \cdot m^{2}/s]\)

となります。これで,\(L_{ハンマー}=L_{物体A}\)となり,角運動量においても衝突前後での保存則が確認できました。

物体Aとハンマーヘッドの運動エネルギー

運動量および角運動量から力積と時間積分を介して運動エネルギーへの導出は別の機会としますので,ここでは,盲目的に既知の運動エネルギーの定義に従います。そうすると,衝突前の運動エネルギーは物体Aのみ運動していますので

\(K_{物体A}=\frac{1}{2}m_{物体A}v_{物体A}^{2}=0.0125[N\cdot m]=0.0125[J]\)

ですし,衝突後の運動エネルギーは,ハンマー(ヘッド)しか運動していませんので

\(K_{ハンマー}=\frac{1}{2}m_{ヘッド}v_{ヘッド}^{2}=0.0125[N\cdot m]=0.0125[J]\)

です。当たり前すぎるので怒られそうですが,これで衝突前後で運動エネルギーも保存されていることが確認できました。

ここで,一つ思い出しました。それは,並進運動の運動エネルギーの定義で混乱することは少ないのですが,回転が伴う角運動量と回転の運動エネルギーが混乱してしまっているケースをよく目にします。今まではどうしてかなーと思っていましたが,角運動量の定義と回転の運動エネルギーの定義の両方に出てくる慣性モーメント\(I[kg\cdot m^2]\)と回転角速度\(\omega[rad/s]\)に起因する混乱のように思えてきました。

回転の運動エネルギーから\(I\)と\(\omega\)に向けて

衝突後のハンマー型剛体の運動エネルギーは前述のとおり

\(K_{ハンマー}=\frac{1}{2}m_{ヘッド}v_{ヘッド}^{2}=0.0125[N\cdot m]=0.0125[J]\)

ですが,同時に,この剛体の棒の回転角速度\(\omega\)は,上記のシミュレーションの結果からは\(0.249996[rad/s]\)と読み取れますので,衝突後のハンマーヘッドの周速\(v_{ヘッド}=0.499993[m/s]\)と,この円運動を支持する棒の長さ\(r_棒\)が\(2[m]\)であることも思い出しますと,円運動の基本ですが,

\(v_{ヘッド}=r \cdot \omega=2[m] \times 0.249996[rad/s]=0.499992[m/s]\)

であることが再確認できます。そこで,上式の運動エネルギー\(K_{ハンマー}\)を\(m_{ヘッド}\)と\(r_棒\),\(\omega\)で再表現しますと

\(K_{ハンマー}=\frac{1}{2}m_{ヘッド}r^{2}\omega^2\)

となり,ここで慣性モーメント\(I=m_{ヘッド}r^{2}\)と置きますと,よく目にします回転の運動エネルギー

\(K_{ハンマー}=\frac{1}{2}I\omega^2\)

の表記に到達できます。あわせて,遡って衝突後の角運動量\(L_{ハンマー}\)も\(I\)と\(\omega\)で再表現すると

\(L_{ハンマー}=I \omega\)

も確認できます。

ここまでWM2Dでの実験結果を手掛かりに限定的な事例ですが,運動量,角運動量,そして運動エネルギー,慣性モーメント\(I\)と回転角速度\(\omega\)との接続をしてみましたが,それでも,角運動量が運動量に距離を掛けたものであることへの不思議さや,その距離の定義すら,特に物体Aの角運動量を定義するときにはなおさら混乱することがあっても不思議でないような気もしています。次に,この運動の図式的な解釈の手掛かりを探ってみたいと思います。

角運動量の図解

Working Model 2D(WM2D)のシミュレーション結果からの作図

スクリーンキャプチャからInkscapeへ

WM2Dによって作図した物体Aとハンマー型剛体の衝突シミュレーションの結果をスクリーンキャプチャし,JPEGとして保存した後にInkscapeにインポートします。Inkscapeで,パス>ビットマップのトレースと進み,

トレース画像を残し,オリジナルは削除します。トレース画像に対して[パス>オブジェクトをパス,パス>ストロークをパスに変換]を掛けて,ストロークのスタイルで線幅を調整します。

このデータをSVG形式で保存します。FreeCADに持っていくときにデータが重くなる傾向にあるので,必要でなければフィルデータはNONEにした方が無難かもしれません。ここでは,一応フィルデータもこのままFreeCADに移行してみます。

InkscapeからFreeCADへ

FreeCADを起動し,SVGファイルをドラッグアンドドロップしますと膨大なPathデータが現れます。それでも,xy平面に線と面として移行されますので,3D空間で視点を自由に変えることできるようになります。これにより,これからの角運動量の図解が容易になります。

FreeCADのワークベンチDraftで,このPathすべてを選択したのちにModification>Upgradeを掛けますと一つのBlockに変換されますので,その後の作業は幾分楽になります。

それほど良い仕上がりではありませんが,この図面をベースに角運動量のベクトルしての図解を進めてみたいと思います。

角運動量の幾何学的表現

幾何学的というほどのこともないのですが,基本的に角運動量の大きさは位置ベクトルと運動量ベクトルによって定義される平行四辺形の面積そのものなので,ここでは,そのことを直感的に掴めるように作図してみたいと思います。

前述したように衝突前の物体Aの角運動量の定義はここでも難解な面があるので,まずは衝突後のハンマー型剛体の角運動量に注目したほうが無難かと思います。

衝突した瞬間に物体Aからの運動量を引き継いだハンマーヘッドの運動量\(\bf {p}=m\cdot \bf{v}\)は上図のように黄緑のベクトルとして表現されます。同時に回転運動が起きているのですが,その運動の勢いは,経験的にも回転中心との距離によることは納得いくと思います。極端な例としては,棒の長さがなくヘッドの重心と物体Aの重心と一致していると回転は起きません。それとは対照的に衝突点が回転中心である点Oから離れれば,同じ運動量を引き継ぐときはより大きな回転運動に変換されることになります。このことを表現するには,ヘッド運動量\(\bf p\)と点Oを基準としたときのヘッドの位置を示す位置ベクトル\(\bf r\)によって定義される上図の長方形の面積がやはり適切だと思います。ヘッドの重心と点Oが一致するとき,つまり棒の長さがない時はこの面積も\(0\)となりますので,どんなに大きな運動量でも衝突があったとしても回転運動は起きないことになります。

この例で,角運動量の幾何学的表現であるこの\(\bf r\)と\(\bf p\)の2辺で構成される長方形の面積が,回転運動の勢いを表しているものと感じ取ってもらえると次に進めと思います。

衝突時\(t=0.0\)から\(1.6[s]\)後の角運動量は図中の「ハンマー角運動量θ=45°」となります。衝突後のヘッドの周速は一定なので,\(t=1.6[s]\)での点Oからのヘッドの位置ベクトルの長さ\(|\bf r|\)と運動量の大きさ\(|\bf p|\)との掛け算は同じ面積を示しますので,衝突後の剛体の点Oを中心とする角運動量の大きさが一定であることが確認できます。

さらに,この回転運動においてはヘッドの運動量は大きさが一定でも常にその向きを変更していましたが,角運動量の面の動きを見ていますと,その面の回転軸は一定であることが分かります。つまり,角運動量までもっていくと,その方向性は回転時も一定であると言えそうです。これは回転を扱う上ではとても明解です。

この回転軸の方向は,角運動量の大きさを示す面の表裏を定義することになります。本質的にはどちらを表にするかは任意とも言えるのですが,その決定法を統一していないと表裏の混雑が起きてしまいます。そこで,ここでは一般的な「右手系」の慣習に従って,位置ベクトル\(\bf r\)に右手の手のひらを添え,親指以外の4指で運動量ベクトル\(\bf p\)に触れるようにすることイメージします。このとき,親指は“いいね”と立てておきますと,その親指が指し示す方向が回転軸の正方向となり,角運動量を表す面の表を定義することになります。

このことは一般的にベクトル積(外積)として

\(\bf {r} \times \bf {p}=|r|\cdot |p| sin \theta \cdot \bf n\)

として表現されます。ここでは,\(\bf n\)がこの面の法線方向を示す単位ベクトルとなっています。\(\theta\)は掛け合わせる二つのベクトルがなす角です。また,ここでの\(\times\)はベクトル積であることを示しています。

衝突後の剛体の回転運動ではこの\(\theta\)が\(\frac{\pi}{2}\)なので,そのベクトル積の大きさを示す面積の形はシンプルに長方形になります。そのこともあり,回転しているものの運動の勢いを示すものとしての角運動量は,まだ受け入れやすいのです。

物体Aが持つ回転する勢いの定義

物体Aは衝突前は単に直線運動をしているだけです。回転運動はしていません。しかしながら,この物体Aがハンマーヘッドに完全弾性衝突をすることで,その運動の勢いは全てハンマー型剛体に移行し,同じ運動エネルギーで回転し始めます。このことをどのように表現すればいいのでしょうか。少なくとも,点Oまわりに回転するこの剛体が持つ角運動量と同じものを,物体Aは衝突前は持っていなければなりません。

左側の平行四辺形が点Oまわりの物体Aの角運動量を示しています。中央の直立する長方形と底辺の長さは同じで,そして高さも同じことが確認できます。つまり,点Oを基準に考えると,衝突後の回転運動での角運動量は,そのままの勢いを衝突前の物体Aが持っていた,ということになります。

一気にここまで打ち込んでみましたが、いかがでしょうか。マニアックな話になりますが、FreeCADの図式表現における使い勝手の良さには感心しつつも、やはりどこかで角運動量の難しさを感じています。どこか狐につままれたような感覚(狐さん自体は嫌いではありませんが、あくまで故事的な表現として)を覚える部分もあり、見えない角運動量の実体の一端でも体感できればと思っています。

物体Aの角運動量は繰り返しとなりますが,まさに二つのベクトルのなす角\(\theta\)が任意の状態となりますので,より一般的なベクトル積そのものとなります。

\(\bf {r} \times \bf {p}=|r|\cdot |p| sin \theta \cdot \bf n\)

おわりに

自分の講義メモの代わりとして,ここにボヤキのように記録しました。おそらくノートに納めてしまうと,どこに書いたのか,どこに保存したのかも本当に忘れてしまいますので,ここに置かせてもらいます。

とにかく、最も理解が難しいのは、衝突前の物体Aの角運動量です。今回は、ハンマー型剛体が空間に固定されている点を基準位置(角運動量を定義するための基準)として、すべての角運動量を定義しています。しかし、物体A単独の角運動量を考える際には、この基準位置は任意に設定可能です。

たとえば、物体Aがハンマー型剛体のヘッドとの接触点を基準位置とした場合、衝突前の物体Aの角運動量 \(L\)は\(0\) になります。ここでの\(L=0\)は、角運動量が存在しないというよりも、正負の角運動量が釣り合って内包されていると解釈できます。したがって、物体Aの角運動量が\(0\) であること自体は、それほど不思議ではありません。

しかし、問題は衝突後のハンマー型剛体の角運動量です。これを物体Aとヘッドの接触点を基準として評価すると、衝突前は\(L=0\)だったにもかかわらず、衝突後には\(L>0\)となるという現象が生じます。これは直感に反する、なかなか厄介な事態です。

そこで、角運動量に対する理解の姿勢を少し改めてみる必要があります。すなわち、物体A単体において角運動量を定義することには本質的な意味がないとしても、物体Aが衝突によって回転運動を引き起こす相手、すなわちここではハンマー型剛体の柄の先端に設けられた回転支点を基準位置とすることで、それまでは回転運動にとって無意味であった物体Aの運動量(すなわち直線運動の勢い)が、ハンマー型剛体に接触する瞬間に、初めて角運動量として意味を持ち始めるのです。

つまり、「物体Aが角運動量を持っている」と捉えるのではなく、実際に回転運動を行う剛体(ここではハンマー型剛体)にその勢いを伝える瞬間においてのみ、角運動量という形で意味を持つと考える方が理解しやすくなります。この観点に立てば、任意の点における運動量も、それが実際の回転体の回転中心との相対的な位置関係の中において初めて、剛体に回転運動の勢いを伝達する角運動量として定義できるとまとめた方がなんとなく落ち着けるような気がします。

少し時間をおいて,続きの考察をしてみたいと思います。でも,説明しようとするほど自分の理解のあやふやさに気づかされます。それはそれで面白く,楽しいことでもあるのかもしれません。



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One response to “分かっていたつもりの角運動量①ーハンマー型剛体での再考”

  1. […] 「分かっていたつもりの角運動量①ーハンマー型剛体」で使用したデータから作成した剛な棒の両端に質量をもつダンベル型剛体で衝突実験をやってみます。実験は同様にWorking Model 2D(WM2D)で行います。このダンベル型剛体も摩擦のない水平面上での運動に限定しますので重力の影響は気にする必要はありません。 […]

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