空力ヤジロベエの作り方Aerodynamic Yajirobei – Gravity-Driven Aerodynamic Balancer

まずはこの「空力ヤジロベイ」を実際につくってみて、座っている人、立っている人、大きい人、小さい人、元気な人、少しそうでない人など、さまざまな人が、誰でも簡単に、気楽に、空気そのものや、その空気の中を移動する「形」との関係を楽しんでもらえたらと考えています。

また、目に見える形をもつすべてのものにおいて定義することができ(流体ではなかなかイメージしにくいのですが)、同時に直接目で見ることはできない「重心」や「風圧中心」といった「力の中心」を感じ取るきっかけにもなればと思っています。素朴な手作り玩具であると同時に、力学教材の一つとなることを願っています。

First, by actually making this aerodynamic Japanese balancing toy known as a Yajirobei, I hope that anyone who is sitting or standing, big or small, energetic or not so much, can easily and comfortably enjoy the relationship between air itself and form moving within it.

I also hope that this experience will offer an opportunity to sense the “centers of force,” such as the center of gravity and the center of pressure, which cannot be seen directly, yet can be defined for all objects with visible form. At once a simple handmade toy and a teaching tool for mechanics, the Aerodynamic Yajirobei is intended to bridge intuitive play and physical understanding.

空力ヤジロベイ初号機

座ったままでもその飛行感覚を体感するためには,A5サイズ程度の大きさが良いようです。材質としては普通のコピー用紙が入手しやすく取っつき易いのですが,軟らかすぎで取り扱いが難しいところもあります。それでも,慣れてくればフラッター1のような動きも見隠れして,いろいろと興味深いところがあります。

To experience the sensation of flight even while remaining seated, a paper size of approximately A5 has proven to be suitable. Ordinary copy paper is easy to obtain and approachable as a material, but it is also rather too soft, which can make handling difficult. Even so, with some familiarity, flutter-like motions begin to appear intermittently, revealing a variety of intriguing behaviors.

悪くはないのですが,紙飛行機=ケント紙とすると,このサイズ感の紙飛行機では重く,必要以上に硬くもあります。材料を何にするかで実は結構いろいろ繊細に体感できることが変わってくるのですが,まずはミスプリントしてしまったコピー用紙で,思い切り入門的なレベルですが,空気力学と剛体力学を楽しんでみようと思います。

また,普通の,どちらかと言うと安めの,つまり薄めのコピー用紙を使うことの難しさの反面,実はその対策を取る過程で,構造力学的なセンスも刺激するような体験もできます。後述しますが,この人型無尾翼機による空気への働きかけが有効に働くように翼全体に曲面を与えていくのですが,その曲面自体がシェル2構造的な強さを生むことで安定した形と変化していく過程も体験することができます。

他の材料の可能性を探ることも大事ですが,これまでの経験だと普通の折り紙では軟らかすぎるかもしれません。薄手の厚紙は意外に良かったのですが,A5サイズよりは大きめになります。座ったままで力も入れず,ほいと空気において飛行させるには,ハリのあるちょっとだけ厚めのコピー用紙とか,美術館や資料館でももらえるフライヤーなどに使用するやや高質な用紙が一番なのですが,まずは手元にある疲れていない,折り目がない,きれいな状態の普通紙のミスコピー用紙の再利用がもったいなくないかなと思います。でも,湿っていたりよれていたりすると,この後の工作には耐えられないかもしれません。空気と遊ぶにはそれなりの繊細さが必要になります☺

とにかく自分で作って遊んでみると,小さな何でもない形なのですが,大げさに言ってしまうと,そこに3つの力学への入り口が見えてきます。

コピー用紙を利用した人型無尾翼機

まずは,この形のポイントを体感しながら作ってみることを想定して,その制作手順をリストアップしてみます。図解はリストアップのあとで適宜説明していきます。

  1. A5サイズのコピー用紙(もったいないので,ミスプリントしたA4コピー用紙を半分にして使っています)の図心つまり重心を確認してください
  2. そのままで少し斜めにしながら落下させ,その動きを観察してみてください。ふわふわするだけで飛行しているとは言えないと思います
  3. 人型にするために,肩部(翼的には前縁,前進翼3となります)に切り込みを入れ,頭部にすべてを折り込んでみてください
  4. ここで,この折り込み部のすべてを切り落とすことなく,頭部の下に折りたたんで収納してください。できるだけ少しのセロハンテープで巻きとめとくと良いかなと思います。また,頭が下がらないように首筋から背中にかけて,アスリートのテーピングのように,少しだけテンションを掛けたセロハンテープを,紙によりが入らないように注意しながら貼り付けてみてください。
    → これによって重心位置は変化しません
    → 二次元的に見ると図心は後方(頭部と反対側)に移動するので,重心と空気による風圧中心4の位置にズレがでてきます。このズレが安定した飛行につながります
  5. 勢いをつけることなく(決して投げないでください)斜め前に静かに放し,1m以上の飛行距離を目指します。おそらく,コピー用紙に非対称な形の癖を与えることなく制作を続けていたら,きれいに頭から落ちていくことになると思います。それで正解です
  6. この急降下を止めて前に飛行させるためには,人型の脚部(翼的には後縁)への形の工夫が必要です。後縁を少しだけ上に凹になるように,つまり気持ち軽く反り上げるようにしてあげると,この回転が止まります。反り上げすぎると,行き足がとまり,ふらふらと落ちてしまいますので,反り上げ具合での“手加減”がとっても大事になります
  7. ここまではA5サイズからの紙片の切り離しは一切行っていませんが,飛行距離を延ばすために,より人型に向けて加工を加えていきます。必要な部位を切り離し,空力的なバランス改善と総重量減を目指します
  8. 人型としての形が整ったら,3m以上の飛行を目指します。この程度飛行できれば,自由落下と違いが体感できると思います。後縁中央つまり足元をつまみ,無理のない程度に水平を保ちながら軽く前に押し出すように放します。力を入れて投げてしまいますと,翼面から空気が剥がれてしまい,飛行は難しくなります。静かに穏やかに前に軽くポンと押し出してみてください。力は不要です。

A5の重心を求める

A5のまま重心は四隅の対角を直線でつなぎ交差する点が図心であり,紙厚が同じで,さらに紙全体で均一な材料である限りは,その図心と重心は一致します。当然のことなのですが,図心と重心が一致した状態では空力的に安定を取ることは難しいので,自明の理ですが,まずは図心,重心を再確認することは素直に大切かなと思います。

A5用紙の図心と重心

この状態で試みに飛ばそうとしても,そううまくはいかないと思います。決して折り込みを入れて,いわゆる紙飛行機にしてしまうと,ここでの目的からずれてしまいます。

ここでの図心が意味するところは,かなり荒い近似ですが,紙を水平に空気の中に静かに置けたと仮定すると,そのとき紙が空気から受ける圧力は紙全体に均一に掛かっていると想像することは,紙遊び中の実感覚としては,それほど否定しなくてもいいような気がします。

このときの圧力を図心と一致させ,それを風圧中心として仮定してみると,次に進めそうです。

重心と風圧中心(図心)が一致しているとき

A5用紙は,風圧中心において空気の力で支えていると考えると,その支点には重心もあることになります。普通のやじろべいがスウィングしながらもつり合っていられる一番の理由は,重心と支点との間に距離があることに尽きます。もし距離がないとすると,自電車の車輪を車軸で支えたときのように,どこでもつり合ってしまうために,いったん回り始めたらその方向に回り続けることになります。このことは,風圧を受ける(風圧中心によって支えられている)A5用紙も安定しないことになることと基本的には類似していると思います。

重心から風圧中心をずらす

やじろべいにしても起き上がり小法師にしても,支点と重心が鉛直方向に並んで静止しているときを基準に考えると,支点回りで回転したときにそれぞれの重心は,静止時の支点との位置関係に戻るような復元力(復元するように働くモーメント)が生まれるしくみになっています。この復元作用が生まれるためには支点と重心の位置がずれている必要があるのです。

風圧中心を重心位置から後退させる

まずは,重心の位置と風圧による支点である図心の位置をずらすことを考えます。両肩のみに切り込みを入れ,頭部の下に折り込んであります。左右対称ですし,頭部に折り込まれた部分の質量は折り込み前と変化はありませんので,重心位置は変化しないと思います。それに対して肩口を外され,頭部のような形がでてきた状態で受ける風圧の中心は,感覚的で申し訳ないような気もしますが,空気に対峙する面積が多い下部に移動することは容易に想像できると思います。上図での風圧中心はあくまでも,ここでのメカニズムを説明するための仮のものですが,実際の動きの様子を見ていると,それほどポイントを外していないようにも思えます。

この状態で飛行させようとしますと,頭部を下げる方向に回頭しながらほとんど真っ逆さまに落ちていきます。団扇の柄を頭部としてポンと投げたときと同じ状態です。家でやると怒られるかもしれません。

飛行するために

重心と図心・風圧中心をずらすだけでは飛行しないことは明確です。では,次にできることは対処法に過ぎないのですが,頭を下げないような力を空気から得ることです。

今一度,飛行する鳥たちの様子を見てみますと

トビ,房総千倉にて
アオサギ,東秩父にて

のようにとっても有機的な曲線と曲面でその形が構成されていることが分かります。今回,参考にすべきポイントは,翼の前縁に該当する翼端での曲面変化と後縁に該当する尾の形だと思います。尾の先端でのわずかな反り上りが確認できます。この形に添うように空気が流れ,圧力変化が生まれ揚力と抗力5,そして鳥本体の重量がバランスを取りながら飛行することになります。

とりあえず,人型無尾翼の後縁を気持ちだけ反り上げてみます。

後縁部の反り上げ:逆揚力の利用に向けて

上図の赤線が翼の断面の様子(翼型)を示しています。後縁の反り上げは強すぎですが,これでも3m越えの飛行はできるようになりました。この反り上げによって,後縁で空気からの押し付け力(下向きの逆揚力ということになります)を期待しています。この部分の空気の力,風圧の代表点として緑のマークを追加してあります。

これで,重心の黒マークと風圧中心(揚力の代表点)の青マーク,逆揚力代表点の緑マークでの力関係を確認するために,この様子を真横からの模式図として示しますと,

重心に集中した機体重量と揚力と逆揚力の力のバランス

のように示すことができます。この人型無尾翼機が飛行している状態では,重心にかかる無尾翼機の機体重量と,風圧中心で代表される翼全体での上向きの揚力と,そして後縁反り上りによる下向きの逆揚力の3力によるモーメントのつり合いが成立することになります。図中の式では風圧中心を支点としたシーソのような状況でして,「モーメントのつり合い」という表現に抵抗がある人は,「てこの原理」を思い出してもらえれば,そこで何が起きているかは体感できるかなと思います。

ここまでの説明では,重心以外のマークの位置は感覚的/概念的ですので,もう少しこの人型無尾翼機を仕上げて行った後に,その機体に対するCFDによる圧力分布の数理的な確認を行いたいと思います。今は感覚的なレベルでの説明でお許しください。

さらに遠くに

頭下げ効果を低減するために

少しでも飛行距離を伸ばそうとすると,短絡的ですが,頭を下げようとする効果を低減すればとの考えにたどり着きます。そこで,これまではA5用紙から1㎜たりとも切り離していないのですが,上図のように,全体のバランスを伺いながら先端を切り落としてみます。これにより,初めて重心位置に変化が起き,ここでは風圧中心に歩み寄ることになります。そうすると,頭を下げようとするモーメントは弱くなるので,その飛行形態にややふわふわ感が生まれ,飛行距離が伸びる傾向にあります。上図では40㎝程度は飛行距離が伸びましたが,やりすぎると,A5用紙そのままの状態と同じで,重心位置と風圧中心にずれがなくなり,前に向かって飛行する性質を失う場合もあります。頭を下げる効果を不用意に低減してしまうと,後縁でも空気の流れが,この動きのもたつきを引き起こし,“飛行”というよりは安定しない“浮遊”になってしまいます。

空力ヤジロベエへ

ここまでで準備運動は終わりましたので,もう少し飛ばすこと考えたいと思います。

ここまでの作業で体感できるのですが,後縁両サイドの面は揚力を生む以上に空気の粘りを受けやすく,むしろ飛行に関してはその行き足を止める抵抗となっていそうです。同時に,普通のコピー用紙でやっているので,その軟らかさのために翼中央から離れれば離れるほど空気と共に動きやすくなり,その流れを乱しているようです。

空力ヤジロベエ号機

初号機については,このブログの最初に掲示してありますが,その三次元形状を取得し,CFD解析6まで実施しておきながら,退職時の引っ越しで,どこかに大事にしまい込んでしまいました。そこで,色は異なりますが同じ紙質の厚めのコピー用紙で同様な形を模索してみました。

翼全体による総揚力を低下させることにはなるのですが,同時に上記ような理由による抵抗も低減できることが期待できるので,次のように後縁両翼を切り落としてみました。これにより,また重心位置も変化しますので,前述の3力点:重心点,揚力点,逆揚力点の位置関係も,そしてその点にかかる力の大きさも変化するので,空力的なバランスも変化することになります。

空力ヤジロベエ二号機,重量2.3g

試し飛ばしが過ぎて,首が少しずれていますが,障子にぶつけながら飛行していますので高さ1.6mぐらいから斜め前に押し出したときに5m程度は飛行しています。ほとんど初速は与えていないので重力と揚力の差による加速で,時々障子を破いてしまうぐらいの勢いはついています。家族には怒られます☺

飛行させるための形の与え方

基本は鳥の飛行形態と同じです。特に彼ら・彼女らの肩から背,そして尾っぽへの特徴的な曲線とそれによって構成される曲面に倣いながら,前述の3力点によるモーメントのバランス(つり合い)を意識・イメージしながら曲面をつけていけば,あまり手を入れることなく飛行し始めます。むしろ,手を入れすぎると,用紙がもともと持っていたハリの強さを失わせ,空気とうまくかかわることができなくなります。制作および調整においては,用紙もともとの表面の状態を維持しつつ,飛行のために必要な空力バランスが取れるように,その形を誘導することに尽きます。これは,大げさですが,自然素材に必要以上な作為を押し付けるのではなく,必要最低限な働きかけにより道具として生かしてきた先人たちの知恵にも似たところが出てきます。

以下に形の与え方のポイントをリストアップしておきます。

  • 前縁両サイドの鋭角三角形の部分は肩口から翼端に向けて,やや強めに曲げ下げていきます。これにより,空気の中を移動し始めるときに空気がうまく翼面をなめていくことになります。当然なのでが,ここで折り目をつけてしまいますと,復活させるのはかなり困難なことになります。
  • この構造では,基本的に首の付け根に弱点が生まれます。どうしても頭を垂れて猫背になります。猫背になることは空気の流れ上は悪いことではないのですが,垂れすぎると抵抗と頭下げの力を強めてしまいますので,頭頂から背中中央部にかけて,上図のようにセロハンテープに適度にテンションを掛けながらテーピングを行います。これによって,首はあがり,良い姿勢で空気中を進むことになります。ただ,テンションが強すぎると,首の付け根から背にかけて上へ凸のカーブが失われ,最悪凹カーブとなってしまいますと,この主揚力を受ける部分の揚力の向きは上下反転することになりますので,“良い加減”でのテーピングが肝要です。
  • テーピングはもう一か所必要です。特に使用する紙質が軟らかい時は,こんなに小さくても重力に負けて,両翼端に行くほど下に撓んでしまいます。鳥も空気をうまくつかみ滑空しているときは,肩から翼中央付近までは,いろいろなケースにおいても上に軽く反りあがるような感じになっていますので,この空力ヤジロベイにおいても,テーピングによって,左右の翼(腕)が水平もしくは少し上反角をもって形が安定するようにして挙げるとうまくいきます。ここでも上反角をつけすぎますと,ただの紙飛行機となり,力技では飛ぶように見えますが,空力ヤジロベイとしての落ち着きはなくなります。
  • そして,この水平に張っているテープの上端辺りに沿って,鳥の背のような,カーブを軽く,本当に軽くつけてください。このカーブをつけすぎるとすべてのバランスを崩すことになります。
  • 同時に,尾っぽの部分は上に反らしてください。こちらは意外と強めに曲げても致命的になることは少ないのですが,やはり自然な力の掛からないロングフライト目指すなら,ほどほどの反り上げから始めてみるのが無難です。

空力ヤジロベエ周りの空気の流れ

ここでは,空力ヤジロベエ初号機がもっとも自然に飛行したときに採取した3D形状データに対する分析とCFD解析に結果,そして,そこから目見えてくる空力ヤジロベイのメカニズムの再確認を行いたいと思います。

空力ヤジロベエのCADモデル

当時MINOLTA製の三次元デジタイザVIVID910により,釣れたての魚を取るように,最長飛行距離を出した時の初号機の3D形状を取得し,その点群から下図のようなポリゴンメッシュデータを得ました。

空力ヤジロベエ初号機のポリゴンメッシュデータ

この図より,空力ヤジロベエの曲面のつながり方が確認できると思います。気のせいかもしれませんが,結果的に鳥の飛行形態に近づいているように見えます。

このデータをCAD(KeyCreator)にもっていき採寸作業も行ってみました。この図面を見ながら初号機を再現することもできそうです。

初号機のCAD図面

この図面より,尾っぽの反り上りの程度が確認できると思います。

CFD解析

3D測定は一方向からのみでしたので,この空力ヤジロベエ3Dモデルの翼の厚みはありません。CFD解析において「壁」と認識してもらえる程度の厚みが必要ですが,実際の厚みではなかなか解を収束させることが難しかったので,今回は,CADにおいて解析可能な程度に厚みをつけてあります。

今回のCFDはFlowsquare+を使ってみました。大事なところまでフリーで実施するころができ,流線も自然に観察できるので,門外漢でありながらも素敵なCFDの一つであると感じています。内容的には移動壁としてシミュレーションすべきかなとも思いますが,まずは風洞実験と割り切って,空力ヤジロベイは空気の流れにある固定壁としてシミュレーションを実施してみました。

空気を流し始めてから2秒後ぐらいの進行方向の空気の流速を見ますと

|u|の分布

空気は左から一定の速度で流されているので,この図では翼面での空気の流れはすでに安定しているようです。この図からも,他の部分での流速の様子と比較すると後縁上部での流速の減速が確認できます。このことと逆揚力との関係を確認するために,こんどは空気にかかる圧力の分布を確認しますと,

空気圧の分布

3力点のうちの揚力点辺りの下面に顕著な+の圧力が分布し,逆揚力点付近では,下面に強めのーの圧力が分布していることがわかります。つまり,揚力点では上向きの力,逆揚力点では下向きの力がかかることが確認できます。この結果は,前述の3力によるモーメントのつり合いを表す模式図の内容と一致していると思います。

参考までに,このときの空気の流れも確認しておきましょう。

翼面の流線,後方から

これは空気を流し始めてから約1秒後の流線の状況です,この段階では翼面を回転しながら移動す興味深い渦も確認できます。おそらく,有機的な曲面のつながりによるものと思いますが,現時点では,気になる!程度の言及で留めておきます。もっとしっかり勉強して,もっとパラメトリックに工作,モデル化,CFDを実施しないとこれ以上のことは言えないように思えます。ただ,よく飛ぶ機体とそうでない機体との翼面での空気の流れの差異はこの方法でも確認でき,機体デザインにはいかせるかもしれません☺

プローブによる圧力変化の確認

Flowsquare+のプローブ機能7を使って,圧力分布を数値的に確認してみました。プローブは下図のピンクの小さなボックスです。

プローブの設置,上面から
プローブの設置,左側面から

このプローブから測定された翼の上面と下面の圧力と,それらの圧力差を図に示しますと,

翼上下面での圧力差の分布

となり,頭部よりでは上向きの力,尾の辺りでは下向きの力がかかっていることを定量的にも確認できました。

この結果を今一度,CFDの図に戻してあげると,

3つの力のバランス

あらためて3つの力のバランスの様子が可視化でき,空力ヤジロベエの飛行のメカニズムを確認することになると思います。

ぜひ,まずは身の回りにあるもので,自分の手で作ってみて楽しんでみてください。そうして,ここで可視化した空気の流れもイメージして見てください。

補足説明

  1. フラッター:飛行機の翼のように弾性のある構造が,空気の力によって振動することがあります。低速飛行ではこの振動は空気の力で抑えられますが、その弾性と空気からの働き掛けの度合いとの関係性において,ある程度の高速となると,逆に空気の力がその振動を強くしてしまうことがあります。旗が風によって激しくはためいているときも似たようなことが起きています。この現象が増大すると実機では大変なことになりますが,この紙飛行機だと翌端での繊細な振動が見られることがあります。 ↩︎
  2. シェル:まさに貝殻ですが,ここでは卵の殻的な構造としての強さをもつ構造との理解でもいいかなと思います。平面状態のコピー用紙は自立できませんが,曲面を与えることで形を保ちやすくなります。参考までに卵の殻はモノコック構造と呼ばれる方が多いかなと思います。このモノコック構造はシェル構造の中の一つの特徴的な構造形態であるとの理解で良いかなと思います ↩︎
  3. 前縁翼:一般的な小型機や滑空機が機体の飛行方向真横に翼を伸ばし,ジェット機の多くは,その左右の主翼を対象にやや後ろに伸ばしています。これを後退翼と称するのですが,ここでの人型は主翼を前に伸ばすことになります。空気の流れとしては多くのメリットがあるのですが,構造的にはいろいろと解決すべき課題を抱えることになります。その一方で,中型から大型の鳥の翼の形を見ていますと,肩口付近では前進翼的になっていることに気づきます。 ↩︎
  4. 風圧中心:ここでは,飛行中に紙面が空気を押すことによる空気からの反力全体の代表点的なものとの理解でいいかなと思います。物体の重量を重心に集中させて理解するように,紙面全体が空気から受ける力を「空力中心」一点で代表するように考えます。 ↩︎
  5. 抗力:抗力は飛ぶことを阻害するとの印象を持ってしまうかもしれませんが,団扇で空気を仰いで風を送るときは,抗力によるものと理解してもそれほど間違いではないと思います。ついでに団扇で揚力を利用するなら,かつてのお座敷芸のように扇を飛ばすように,柄を前にして適度に浅い角度で空気の中に投げ込むと飛んでいるように見えるときがあります。団扇の面を仰ぐ方向と平行に置くと,空気に対して何の働きかけもしませんが,少し角度をつけてあげると,団扇の動かす方向とクロスする方向に空気から力を感じることができると思います。これが揚力です,と言いたいところもありますが,このときの力は揚力と抗力の合成力と理解したほうが現実的かもしれません。そして,仰ぐ方向に面を向けると,反対方向に空気からの抵抗を感じるでしょう。これが抗力です。 ↩︎
  6. CFD解析(数値流体力学解析):ここでのCFDはComputational Fluid Dynamicsのことです。Business関連では別の意味でも使われているようです。CFDは,コンピュータを用いて流体の挙動を解析する技術です。 ↩︎
  7. https://fsp.norasci.com/display.html#probe ↩︎


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